今はもうない

2004年11月18日 読書
かなり前に購入してもう何度も
読んだことのある本なんだけど
久しぶりに読み返して新しい発見。

作中で犀川と萌絵が会話している時の
犀川の発言。
「言葉とか理論と言うのは、基本的に他人への
 伝達の手段だからね。言葉で思考していると錯覚するのは、
 個人の中の複数の人格が情報や意見を交換し、議論しているような
 状態か、もしくは明日の自分のために言葉で思考しておくよう
 場合だね」
これを読んで、ああ、と思ってしまったわけ。

実は最近、彼氏さんのことで友人にいろいろと相談したときに
自分の考えや今の彼氏さんとの状態を説明しようとしても上手く
言葉が出てこなくて「あのー、ほら、何て言ったらいいかな」と
何度も繰り返してしまった。
完全に言葉に詰まった状態。
友人には「由江、年とった?」って笑われたんだけど、この本を
久しぶりに読み返してすごく納得がいった。
今の私は、言葉で思考してないんだ。物凄く感覚的な部分で
いろいろと考えたり悩んだりしてるから、それを他人に対して
説明しようとしても、できない。
犀川的に言うなら、「個人の中での議論がなされていない状態」な
わけだなぁ(苦笑)。

それにしても、何度も読み返しているのに何度も
同じ文章でいろいろと考えることができるあたりが
奥が深いところだなぁ、と思う。
森シリーズの中で一番のお気に入りな理由は
『SMシリーズの異色作』っていう部分以外にも、ラストの一文や
表紙にさりげなく書かれた文章、情報伝達や過去の物が消え逝く
様子を書いた文章の美しさがあるんだと思う。

ケロロ軍曹

2004年11月12日 読書
ゲームとアニメと、最近いろんな
所で目にしていたケロロ軍曹の漫画を
ちょっと目にしてきた。

…うーん、私がまずゲームとかから
入ったせいかも知れないんだけど、
ケロロ、人相(カエル相?)変わり過ぎちゃう?(ぉ)。
まあ、連載開始時からキャラの顔がだんだん変わって来るのは
どんな漫画でもあるから無理ないのかな。

それにしても、この1巻を読んでみると「ケロロ軍曹」のゲームが
ものすごく原作にそったものだったんだーと実感。
ケロロ登場、ママ登場、タママ&桃華訪問、幽霊リゾート…。
全部漫画のエピソードにあるもん。まあ、幽霊に操られたりは
しなかったけど(笑)。
まだ1巻しか読んでなかったのでギロロやクルルみたいな他の
隊員は登場してなかったんだけど、結構面白かったので
今度漫画喫茶にでも行ったときに読んでみたい。

それにしても、漫画の、それも比較的初期からガンダムネタや
エヴァネタが入っていた事にちょっと笑えた。
ケロロ、いつの間にガンダムを知ったんだろう(笑)。
前作が図書館でどうしても見つからなくて
シリーズ最終作のこれから
読み始めてしまったんだけど、それでも
すごく楽しめた作品。

しのぶ先生の行動や考えがすっごく
ハチャメチャなんだけど、でも自分の
教え子をすごく大事にしてるんだなって
いうのが分かって、何だかいいなーって
思ってしまった。こういう先生に会いたかったなー、と。
教え子達と先生の関係がまるで友達みたいで、軽口を言い合ったり
家に遊びに来てはちゃっかりいろいろご馳走になったり、
こういう付き合い方が本当に羨ましいと思う。

日常のほんの些細な出来事から事件を推理していく方法も
ベタなんだけど展開がとっても面白くて引き込まれるし。
登場人物の関西弁もテンポの良さに拍車をかけてるんだろうなぁ。

とりあえず、この短編集の中で一番好きなのは
「しのぶセンセの上京」。家族について大人とは全く違った視点で
考えて行く子供の姿がすっごく健気だった。
救いのある終わり方も読んでてホッとしたし。
これが最終作なのが残念。前作もどこかで見つけて読みたいなぁ。

遮那王義経

2004年10月22日 読書
月刊マガジンで連載中の漫画。
義経について記されたある貴重な
資料が発見された。しかしそれに
よると、義経は10代で
病死していたのだ。では、平家を
滅ぼすために戦った義経は
一体誰だったのか。その真実は…
というお話。

絵がとっても見やすくって、ストーリーもとっても面白い。
義経と主人公・漂太の関係も面白いし、漂太が少しずつ
周りの人達を惹きつけていく部分も読んでいてとっても楽しい。
知恵を働かせて、あるいは勇気を見せて周囲を動かしていくのって
やっぱり少年漫画の醍醐味だなぁと再確認。

天狗との修行、女装しての弁慶との戦いなど、義経を語る上で
外せないストーリーもしっかり収録してあるし、この漫画独自の
オリジナル解釈なども含まれていて読み応え充分かと。
それにしても、義経と漂太のお互いを信じ合う友情っていいなぁ。

サンタのおばさん

2004年10月10日 読書
東野圭吾さん作の絵本。
絵がすっごく可愛らしくて
ほのぼのしてしまった。

世界各国のサンタが集まって
行う『サンタ会議』。
そこに現れた新サンタ候補は
なんと女性だった。いまだかつてない
『女性のサンタ』に猛反対する各国のサンタ達だが…。という話。

絵は本当に可愛くって子供向けでほのぼのする作品なのに
書いてある内容というか、根底にあるテーマは
大人にもすごくしっかり考えさせる内容で、読みながら
ちょっといろいろと考えてしまった。
女性のサンタに反対するサンタ達の主張にも一理を感じてしまうし
かと言って賛成派の意見も納得できる部分がちゃんとあるし。
女性と男性っていう、「性差別」的な問題って難しいなぁと
思ってしまった。
落ちはとってもほのぼのしたもので、この落ちにちょっとだけ
救われたような感じもする。

それにしても、ミステリーばっかり書いている東野さんの
作品としてはとっても異色のものじゃないかなと
ちょっとびっくり。

天空の蜂

2004年9月15日 読書
ミステリーではなく、帯にも
あるとおりサスペンス。
すごくドキドキしながら読めた!

自動操縦装置がついている
ヘリコプターが盗み出され、原発の
上空に飛んでいる。犯人は日本中の
原発の停止を求めてきた。
ヘリコプターの燃料がなくなるまで数時間。墜落を防げるか…
という話。

東野さんはこういう作品も書くんだなー、というのが第一印象。
本格推理からこういったサスペンスまで、本当に作品の
幅が広い作家さんだなぁと思う。
しかし、ジャンルが変わっても読む人を引きつけるテンポと
文章力は相変わらず健在。
今回は原発の仕組みやヘリコプターの仕組みを細かく解説してる
部分も多くて、そういったところを読むのは若干疲れたけど
「原発の仕組み」を作中で理解するのと理解しないのとでは
犯人がこの事件を起こした背景に対する思い入れが全然
違うんじゃないかと思う。

多くの人がいろんなところで同時に動いているから、ある時間に
どこでどんな人が動いていたのか、ちょっとつかみにくいところも
あるけれど、でも事件が一気に収束していく中盤以降は
本当に読みながらハラハラしたー。

終わり方には賛否両論あるんだろうけど
余韻と想像する余地を与えてくれる終わり方、私は結構好き。
あれから犯人がどうなったのかがちょっと気になるけど。

銀魂 3

2004年9月11日 読書
とうとう3巻出たよー!
最初のころはここまで連載続くのか
不安だったから嬉しい限り。
表紙の神楽嬢も可愛いし。

個人的にびっくりだったのが
長谷川さん再登場。1話限りの
使い捨てキャラかと思ってたよ(マテ)。
この巻では真選組も結構頑張ってるし、長谷川さんの回や
カエル警備の回、火消し組の回など個人的にツボな話が
多かった。余白ページに書かれているおまけページも笑えたし。
お花見の回みたいなギャグとして笑える話もすごく好きなんだけど
なんか説教されてるような人情話がやっぱり好きだなぁ。

そしてあいかわらずのセリフギャグ。
「趣味は糖分摂取、特技は目ェ開けたまま寝れることです」
「オッさんはなァ 寂しいと死んじゃうんだ!!」
「燃えないゴミが嫌いなんだよ! ホントは燃えるのに
 出し惜しみしてるみたいじゃねーか 奴らホントは
 燃えられるんだぜ ダリーからサボってるだけなんだよ!!」
…確かに燃やそうと思えば燃えるよなぁ、きっと。
ビニールとかさぁ…いろいろ…とか思わず思ってしまう
私はこの作者さんと気が合うのだろうか(自爆)。

顔 (下)

2004年9月10日 読書
やっと完読。

なんか予想もしていなかった
展開の連続って感じで
びっくり。
上巻の最後であれだけ大活躍だった
ムーディー探偵がいきなり
殺されるとは思ってなかった…好きなキャラだっただけにショック。
患者の中に存在した『犯人の関係者』にはすぐにピンと
来たんだけど、警察の方の『関係者』は分からなかったしなぁ。
ラストも主人公と犯人の直接対決になるとは思わなかったし。

結局、人の精神なんて弱いもので、誰がいつ何がきっかけで
どんな心の病になってしまうか分からないもんだなぁ。
誰だって何か1つぐらいは心の中に『爆弾』を抱えてるのかなぁ。
読み終わった後ちょっとだけ鬱になってしまったり。
ラストに書かれている『文明はひび割れやすい薄っぺらい
ベニヤ板なのだ〜』という文章が、作品全体に描かれている
人の心の弱さを更に強調している風に感じられたかな。

やっぱりミステリーと言うよりはサスペンスな1作だと思うけど
かなり面白かった。これからちょこちょこシドニィ・シェルダンの
作品に手を出してみようっと。

顔 (上)

2004年9月5日 読書
下巻はまだ読み終わって
いないけれども、
とりあえずは上巻の感想を。

ある精神分析医の患者と
クリニックの受付嬢が相次いで
殺害される。警察に疑われ始めた
精神分析医だが、少しずつ彼自身にも危険が迫り始める…という話。

シドニィ・シェルダンの作品を読んだのは始めてだったけど、すごく
引き込まれる感じがしてさくさく読めた。
ストーリーの展開がすごくスリリングで、この先どうなるのかが
とっても気になって、ぐいぐい引っ張られてしまう感じ。
まるでサスペンスドラマを見ているみたい。
命を狙われながらも警察には頼れない主人公の精神医の葛藤が
見ていてハラハラする。最後の最後で登場した私立探偵の
存在もこれから楽しみだし。

ミステリー、というよりはサスペンスとして読んだ方が
楽しめるかも?
まず、何をおいてもこれだけは
言いたいこと。
タイトルが素敵すぎです。

中身はどれも短編集で、結構
スピーディーに事件は
解決してしまうんだけど、その事件の中で描かれる
人の弱さや人の脆さがすごく余韻を残す。1つ1つじっくりと読んで
読み終わった後に広がっていく虚無感や寂しさを味わう。
それがこの本の楽しみ方じゃないかな、と個人的には思う。

それでは、いつものごとく私のお薦め作品をいくつか。

『嘘をもうひとつだけ』
本のタイトルにもなっている話。バレエ団の事務員がマンションの
バルコニーから転落。何の動機もないはずの同じバレエ団の
事務員の元に刑事がやってくる。事件の鍵になるのは
15年前に上演され、そして今再演されようとしている
作品、「アラビアンナイト」…という話。
動機が何とも言えず余韻を残す。それからタイトルの意味も。
最後に刑事と犯人の交わす会話もすごくいいし印象深い。
あと、犯人が途中バレエの舞台の内容で取り乱すところも
犯人の悲しさが伝わって来ていいなあ。

『冷たい灼熱』
夫が仕事から帰ってきた時、妻は死体となっていて
息子は行方不明だった。どうやら顔見知りの犯行らしい。
犯人の動機は何か、そして息子はどこへ消えてしまったのか…な話。
なるほどなぁ、と思った。犯人の見当はついていたけど。
「アクロイド殺し」とかでも思ったけど、地の文章で嘘をつかずに
うまく真実を覆い隠してミスリードを狙う話が私は好きらしい。
犯人の動機も意外性に富んでいておお、と思ってしまった。
この本の中で一番気に入っている作品。

『狂った計算』
ある男が交通事故で死んだ。それとほぼ同時期に別の男が
行方不明になった。捜査線上に浮かんだのは死んだ男の妻で
行方不明になった男の不倫相手の女。彼女が隠している秘密とは
一体何なのか…という話。
最後の最後でのどんでん返しが秀逸。すっかり騙された!
なるほどなぁ、それが伏線だったのねと感心してしまった。
まぁ、アイスノン&ロックアイスには若干「えー」と
思ってしまったけど(苦笑)。ある意味一番ミステリーっぽい
作品かも知れない?
なるほどなーという感じ。
小説だからこそ使えるトリックって
やっぱりあるもんだなぁと思った。

金田一一と七瀬美雪が迷い込んだのは
あるオフ会の会場となっていた
コテージ。彼らは今日はじめて
会った人間達で、コテージ内でもハンドルネームで呼び合い
決してお互いの本名やプライベートなことに触れようとしない。
そんな異様な状況の中で次々と殺人が起きる…という内容。

犯人の使ったトリックもすごいけど、動機もすごい。
なんか、今なら現実でこんなことありそうだなぁと思ってしまった。
掲示板やチャットに携帯からもアクセスできるようになったし
パソコンだって使える人はものすごく増えてる。
匿名掲示板に犯罪予告が書き込まれたりする世の中だし
こういう『お互いのプライベートに触れないオフ会』とか
『ネット上の仲間達での完全犯罪』とか、あっても
おかしくないんじゃない?みたいな。
私自身、ネットをやる人間だから余計にそういうふうに
感じるのかも…。

「雪に閉ざされたコテージ」というのは舞台としては
ありがちだけど、この内容は推理漫画は受け入れない人でも
読んでみる価値はあると個人的には思う。
海外のファンタジー作品。
ハリポタ系の話と思っていただければ
分かりやすいかと…。
うーん、本の厚みもハリポタクラスで
持ち運びが大変だった…(汗)。

妖霊(ジン)のバーティミアスは、まだ
師匠の元で勉強中の魔法使いの少年、ナサニエルに召喚されて
ある強力な魔法使いの元からアミュレットを盗み出してくるはめに。
しかし、そのアミュレットはバーティミアスやナサニエルが
考えるよりももっととんでもない物だった…という話。
章によってバーティミアスの一人称とナサニエル中心の
三人称で書かれていて、2人の化かし合いは読みながら
はらはらしたりイライラしたり(笑)。
ハリー・ポッターと違って主人公がかなり嫌な性格してるので
それをどこまで割り切って読めるかが勝負どころかも。

翻訳物だけど文章にクセも少なく、ハリポタシリーズの
好きな人なら結構気に入るかも。ハリポタよりも魔法関連の
注釈は少なめだから想像力を必要とする部分もちょっと
あるけど。
ファンタジー小説としてはかなり楽しめる部類では?と思う。
全三部作の一作目らしいので、続編が楽しみー!
この作品で張られた伏線がどう動くのかが気になる…。

またたび

2004年8月17日 読書
ちびまる子でおなじみの
さくらももこさんが訪れた
いろんな国・場所での思い出について
書かれているエッセイ。
旅行記とは何か違う気がする(笑)。

実は私は海外に行った事がないので、
この本を読みながら「へー、そうなんだー」と感心しながら読めた。
普通の旅行記とは全然違ったポイントで書かれているのが面白い。
グアムに行きながら1回も海で泳がずマッサージやエステや
買い物でだらだら過ごした話とか、ベネチアでずーっと
ベネチアンガラスのお店を巡っていたこととか
(私もガラス細工結構好きなので気持ち分かるんだなぁ(笑)。
どの国も買い物・食事がメインに書かれているような気も
するんだけど(苦笑)。
やっぱり好きなんだろうなぁと思う。お土産を買っているときの
描写とかがすごく生き生きとしてるんだもん。

ちびまる子でも他のエッセイ作品でもそうだけど、本当に
飾らないというか、いつでもどこでも自分のままで行く人だなぁ。
何となく、こういう人になりたいなぁと思う。
あと、読み終わってから無性に旅行に行きたくなった(笑)。
とりあえずは日光東照宮あたりから?

予知夢

2004年8月13日 読書
長編小説かと思って借りてきたら
短編小説だった…。目次だけばっと
確認したんだけど、気付かなかったよ。
なんだか最近短編にぶつかる確率が
高いなぁと思ってしまった。

まぁ、それは置いといて。
肝心の内容なんだけど、思いも寄らぬ方向で責められたけど
これはこれですごく面白いって感じだった。
隣人の首吊り自殺を予知夢で目撃した少女、恋人が
殺されていたまさにその時遠く離れた自宅で彼女を目撃した男、
旧家にある夫婦が引っ越して来てから突然発生した
ポルターガイスト…などなど、様々な超常現象をヒントに
完全犯罪と思われていた事件の真相に迫って行く…というもの。

一見『幽霊のしわざ』にしか見えない超常現象が、実は
犯人がアリバイのために作り出したものだったり、あるいは
犯人ですら全く意図しなかった偶然の産物だったり…。
私はオカルト系の話も推理系の話も大好きだったので
ものすごくわくわくしながら読めた。
まぁ、若干ご都合主義というか、『そんな偶然あるかい!』と
突っ込みたくなってしまう部分はあるけれど(苦笑)。

それにしても、最後の予知夢の話はいいなぁ。
最後の落ちが面白く、ちょっとぞっとする。
これが表題になったのが分かる気がする。

放課後

2004年8月11日 読書
珍しく読んでちょっと疲れた
本になってしまった。性的な
描写がちょっと多かったからかな?
てか、共学にしか通ったことがない
私だけど女子高ってこんなに
すごいところなの?と思ってしまう。
いろんな意味で。

とりあえず、密室トリック&主人公関連トラップはことごとく
ひっかかりましたとも、ええ。愉快なほどに(自爆)。
ここまで華麗に騙されると何だか気分いいよー。
奥さん関係のトラップは見抜いたけどね。
しかし、密室の説明が出てきたときに何でわざわざ
ドアとか角材のサイズまで挿絵入りで説明してるんだろう、と
思ったらそれすらも密室トリック解明のために必要な
重要なヒントだったとは…。なるほどなぁ、と
唸ってしまった。

しかし、殺人の動機は…うーん、あんまり納得できないかも。
いや、私も女だけど…でもそれで殺人まで発展するかなぁって。
まず自主退学すればいいんじゃ、とか思ってしまうから
ちょっと最後の最後で「えー」な感じだったかも。
作品の舞台とか雰囲気的にはすごくいいんだろうけど。

とりあえず、ラストの「長い放課後になりそうだ」は東野さんの
作品の中でも一、ニを争う好きなラストになりそう。
読みながら笑ってしまったよ…。
東野さんって名探偵シリーズといい
こういうネタ(?)好きだなぁ。

短編集なんだけど、どの作品も
タイトルが「超○○殺人事件」という
風になっている。では、何が『超』か。
疑問に思ってしまったのだけど、読み進めて行くと納得。
どれも推理作家の裏側をおもしろおかしく書いた作品なのだ。

単純にラストの落ちで失笑したり笑ったりして終わりになる
作品もあれば、最後にどこか気味悪さや後味の悪さを
残す作品もあってどれも面白い。
ただ、人を選ぶ本ではあるだろうなぁ…。

ちなみに、私のお気に入りは
『超理系殺人事件』
『超犯人当て小説殺人事件』
『魔風館殺人事件(超・最終回 ラスト5枚)』
どれもちょっとでも解説してしまうとネタバレになってしまいそうな
気がするので細かいあらすじはなしに。
タイトルで面白そうだと思ったら手に取ってみてください。
ただ、シャレの分かる人じゃないと厳しそう(苦笑)。
実はスティーヴン・キングの本を
読むのはこれが始めてだったり。
図書館で何となく目にとまって
試しに借りて来てみた。

大学に通っていた主人公は
実家の母親が脳卒中で倒れたという電話を受け、
急遽ヒッチハイクで実家に帰ろうとする。真夜中に墓地の側で乗った
1台の車、その中で彼は恐ろしい決断を迫られる…という話。

ホラー小説としていい意味で
読者を裏切って行くなぁと感心。主人公と同じでいつ死ぬか
いつ死ぬかとどきどきしながら読み進めて行ったら…
ああ、なるほどなぁ、という感じ。
あと、墓石に書かれていた(ように読める)『後悔先に立たず』も
作中ですごく効果的に使われていたと思う。
この文章が読者をいろんなところで深読みさせる効果に
つながってるんじゃないかなぁ、と。

あとがきで知ったんだけど、これインターネットに掲載されてた
ネット小説だったらしい。ほぉーと思ってしまった。
何となく、まだ両親が生きてるうちにこれを読めて
良かったかもと思ってしまった作品。いや、特にそのこと自体に
深い意味はないんだけど、なんとなく。

宿命

2004年8月1日 読書
うーん、読み終わった後に
微妙にもやもやが残る作品。
東野作品で『すっきり感』を
感じられなかったのはこれが
始めてかもしれない…。

(ネタバレ有り注意!)

原因はやっぱり…事件の直接の動機だろうなぁ。
「人体実験」まではまだ何とか分かるんだけど、唐突に
「脳に手術して〜」のくだりが出てきたから…。確かに
サナエさんの前例を出してフォローしているから別にアンフェアでも
何でもないし、「見えない糸が〜」のくだりにも
結びつくんだけど…何て言うのか、唐突に現実味がふっと
消え失せてしまったような、そんな感覚。
うまく言い表せないし、自分でも何と言ったらいいか
掴めないんだけど、それまで入り込んでいた世界からいきなりぽんと
放り出されてしまったような感じがした。
それとも、私が気付かないうちに拒否感を示してしまったのかなぁ。

あと、「見えない糸」には作中でしっかり理由付けしてあるのに
主人公の不運の連続は本当に偶然の不運だったりとか。
イマイチ満足しきれない感じが何とも…。

ラストの『君の方だ』のセリフはシチュエーション的に
いい物があっただけに惜しい…。
あのラストシーンは映像で見てみたいなぁ。

天使の耳

2004年7月28日 読書
ミステリーって言うよりはサスペンスな
1冊。交通事故の話が集められた
短編集で、小さな事故から大きく
歪められた人々の生活とそれによって
生み出された狂気を描いた作品集。

その中でも私のお気に入りは2つ。
『天使の耳』
真夜中の交差点で起こった交通事故。どちらの車も信号は
青だったと主張する中、盲目の少女が天才的な聴力と
記憶力で事件を解決に導く、という話。本のタイトルにもなってる。
最後の最後にやってくるどんでん返しがたまらない。
ちょっと時間に関して複雑な部分があるから、頭が
こんがらがりかけたけど(苦笑)。

『捨てないで』
高速道路を走る車の中で妻の殺人計画を立てる夫と愛人。
一方、その夫が車窓から投げ捨てた空き缶が目にあたり、
失明してしまった女性とその恋人。恋人は何とか空き缶の
持ち主を探し出して責任を追及しようとする…。
タイトルの「捨てないで」に二重・三重の意味があって
面白い。意外に終わり方もさらりとしてるし。
個人的にはこの短編集の中で一番だった作品。

交通事故って毎日どこかで起こっているものだろうけど、その中で
様々な悲劇が生まれるものだなあってこの本を読むと思ってしまう。
車は細心の注意を払って安全運転しないとなぁ、と思ってしまった。
ミステリーの短編集。
中にはミステリーと言うよりは哲学の
ような感じの作品も混ざってて、
なかなか深く読める。
ミステリー作品好きじゃない人でも
結構好きになれる作品がいくつか
あるんじゃないかな。

ということで、私のお薦め作品をいくつか。

『赤ん坊誘拐事件』事件を解決するまでの顛末が面白い。
いかにも海外らしいユニークで意外な方法で犯人探しをする
くだりが楽しい感じ。確かに赤ちゃんって第三者から見ると
全員同じような顔に見えるんだよなぁ(笑)。

『ガンダラ男爵の死』どっちかと言うと笑える話だと。
いや、これがちゃんとした推理小説だったら怒るところだろうけど
何となくこの短編だと許せる雰囲気がある。

『めまい』ミステリーというよりは、サスペンス?
人間の深層心理って時に思わぬものが潜んでいて恐い。
でも、いざ潜んでいるものが浮かび上がってきたら自分でも
どうすることもできないのかもなー。

『ありふれた殺人』
『陪審員』
『人間の最後のもの』
この3つは完全に哲学系のお話。この3つだけを読むためにだけでも
この本を手に取る価値はあると思う。特に「陪審員」はお薦め。
夫を殺した妻の裁判に陪審員として出席したある中年男性が
やがてその殺人犯を自分の妻と重ね合わせ…という内容。

翻訳物なんで文体にくせがあるから人を選びそうだけど
どれか1つだけでも試しに読んで欲しいもの。

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